2012年7月15日日曜日

こんばんワニ。


今日は朝寮で大変なことがあり、一日静かにすごしてりゃいいものの、夜に話題(?)の映画なんか観ちゃったもんだから、眠れそうにないです。


こうして自分のウェブログに書くのもどうかと思うのだけど、インドでこういうことがあるというのをわかってもらいたいし、気持ちを整理させるためにも書いておきたい。


今日は、土曜日。友人の家に遊びに行く予定だったのだけど、昨日学科長が不在で外出許可が取れなかったため寮で過ごすことに。週末寮にいるときは朝寝坊が基本。でも今週から新聞を購読し始めたので新聞をとりに行くために(朝遅い時間に新聞を取りに行くと「何時だと思ってるの」とイヤミを言われるそうなので)8時すぎに起きる。

水あびをして、時間を見るともい朝ごはんが用意されている時間。私の部屋はドアを開けるとちょうどダイニングルームの、ご飯が置かれるテーブルが見える位置。ドアを開けると、やっぱりもうご飯が準備されている。お皿とスプーンを持って、1階へ向かう。

週末にはめずらしく、階下ががやがやしている。寮母手下(正式には副寮長)が「今彼女はどこにいるの」と生徒に聞いている。寮母手下はNightyという長いワンピース状の寝巻きにショールをかけている。これは、寝巻きのままなんだけど外に一時出なくちゃいけないというときこちらの人がする格好。


なんだろうと思ったけど、そのままダイニングホールに向かう。すると、1階のオンナノコたちが一斉に部屋から出てきて玄関へ向かっている。一度一緒に結婚式に行ったことがあった子に「何かあったの」と聞くと、女の子が一人転落したのよと言って玄関に向かっている。えぇ、と思って私もついていく。


見ると、寮の前の道路の端に、うつぶせで誰か倒れている。顔が見えないので誰かわからない。2階の大部屋に住んでいる生徒が寮の外と中を行ったり来たりしているので、どうやらその中の誰かのよう。倒れた彼女に話しかけている子たちもいるのだけど、反応があるのかどうかはわからない。


英語とタミル語でみんなが話しているのを聞くと、3階にあたる屋上から落ちたのだということだった。私もよくテスト中は柵なんかない屋上のへりに座って勉強していて、ここから落ちたら…とヒヤっとしたことがあったけれど、「へりが壊れているところがあったのよ」と寮母が言っているので、彼女が座っていたへりが壊れたんだろうと思った。


しばらくすると、警備のおじさんたちがバイクでやってくる。まさか彼女をバイクで病院まで連れて行くんじゃ…と思っていると、あとからAutoがやってくる。どうやら、Autoを呼びに行っていたよう。でも、この状態でAutoになんか乗せていいんだろうか。と思っていると、寮生たちが彼女を起こそうとしている。そこで彼女が叫びだした。とても痛々しい叫びで、彼女の下半身は全く動かないようすだけど、とりあえず意識があるのがわかった。そのまま叫ぶ彼女を乗せてAutoが出発。

そのあとすぐに別のAutoでルームメイトや寮母が病院に一緒に行くのかと思ったけど、皆大学が用意したであろう車を待っている。

その間に事情を聞くと、今朝彼女は屋上で電話をしていたらしい。ルームメイトがいつまでの彼女が部屋に戻ってこないのを変に思ってあちこち探したけれど見つからず、ようやく最後に寮の裏側の、水をくみあげるタンクがあるところから下をのぞいたときに、彼女が転落しているのを発見したそう。そこからどうやって正面まで運んだのかはわからないけど、近くの家に住んでいるであろう人たちが来ていたので、おそらく皆で運んだんだと思う。

彼女はケララ出身で政治学(というのも私は今日知ったのだけど)の生徒。とてもきれいな顔立ちで、いつも肌が白めできれいなぽっちゃりオンナノコAと一緒にいます。授業に行くときも、ゴハンを食べるときも一緒。朝新聞を読むとき以外は一緒にいないのを見たことがないくらい。この間二人がケララから大学に戻ってきたときも、Aのご両親が二人とも一緒に連れて帰ってきたので、ケララでも知り合いだった仲なんだろう。そんなAが第一発見者らしいです。

見ていると、Aや庭師のおじちゃんが階段を行ったりきたりしている。しばらくして、おじちゃんが布切れを持ってやってくる。白に緑のラインが入ったタオルが血まみれになっている。さっき彼女がうつぶせになっていたところに敷いていたものかと思っていたら、「Cutting」と皆が言い出す。手下(彼女はタミル語を話しません)が「彼女、リストカットしてたの?」と聞いている。おじちゃんが左の手首をしきりに指差して、何かタミル語で言っている。生徒たちが「Suicide」と言い出す。自殺未遂だったんだ…。

ずいぶんあとになって車が到着。寮母、手下が乗りこむ。

寮の中が騒然となっているときに申し訳ないけれど、私は今日授業料を払いに銀行に行かなくちゃいけない。仕度をして部屋を出ると、大部屋に人が集まっている。話を聞くと、彼女はKasturbaでスキャンを受け、腰の辺りを骨折していたらしいので、治療を受けているとのこと。

Aは朝からずっと携帯電話で誰かと話している。おそらく、転落した彼女のご家族と話をしていたんだと思う。親友がこんな事故にあうなんて、彼女もさぞかし辛いだろうと思って「あなたは大丈夫?」と声をかけると「私は大丈夫」と言う。なんだかもっと悲しくなる。

銀行から帰ってきて部屋にいると、「ねぇねぇ、聞いた?」と思いっきり寝坊して何も知らなかった感じの寮生がやってくる。「まだ詳しいことはわからないけど」と話す。「意識はあるみたいだけど、もっとちゃんとした病院で診てもらった方がいい気がする」

その後幾人からか話を聞いて、彼女が無事なこと、Dindigulの病院に移されたことがわかった。脊髄(?)を含め5ヶ所ほど手術が必要だったそうだけど、意識もある。彼女はひとりっ子で、お母さまが今足を悪くしているので、お父さまとイトコが駆けつけたのだけど、イトコもオトコノコばかりなので、寮母が今日は彼女について身の回りの世話をするとのこと。Aが行くと言ったのだけど「彼女は学生だから許可が出なかった」という、またインドの仕組みにイライラする。映画で誰か事故に遭ったら病院のシーンで親友がそばにいると思うのだけど。

そして「ボーイフレンドと何かあったみたい」ということも聞いた。昨日はずっと電話で誰かと話しをしていて、朝4時まで話していたと言っている人もいたけれど、これは定かではない。昨日の夜、ゴハンを食べないというのでルームメイトが「どうして」と聞いたけど、「いらない」とだけ言ったそう。今日もいつもなら朝コーヒーを飲むのに「いらない」と言ってふらっと消えたよう。同じ学科の子は「何かおかしいなと思って話を聞くべきだったのよ」と言うけれど、そんなこと言ってAが自分を責めてしまう方が私は心配。


うちの大学の寮生には自殺者が多いらしい。実は先日も、私のクラスメートと同室の子が首つり自殺をしようとしたのが「Confirmed」されたと聞いた。これがどういう意味かわからかったけど。去年もMBAの子が未遂したと聞いたし、毎年ケララの子に自殺(未遂)者が出るようだし、君たちの寮のどの部屋で誰が自殺したのか全部覚えてるとか言う教授もいるし。この休み中に亡くなった生徒もいるよう。

というか、これはインドの大学どこでもそうなのかもしれない。引き合いに出すのがまた映画で申し訳ないけれど、自分の論文プロジェクトが認められなくて自殺をするというプロットがあった。

つい最近、「南インドで自殺者が多いと聞いたのだけどこれは多重債務と関係があるのか」と日本から問い合わせがあり、その研究の要旨を読む機会があった。多重債務の件もあると思うけれど、その研究によると南だけではなくてインドの若い人たちに自殺者が増えているとのこと。都市で一生懸命勉強していい仕事につこうとしたけれど、なかなか思うような仕事にめぐりあえない、仕事がみつかっても自分のしたいこととは違うと感じている、といったことが自殺の動機になっているそう。その一方で、農村部の自殺者が増えている。同じように「何もかもうまくいかない」ことが引き金になっているのだと思う。対人関係も理由のひとつにあげられていた。義理の家族との関係(嫁姑)のような典型的なパターンもあるだろうし、彼女のような婚前カップルの問題もあるんだと思う。両親に認められなくて駆け落ち、という話もよく聞くけれど、ただうまくいかないこともある。

カウンセリングのクラスを受けていて、なんとタイミングがいいんだろうと思う。今週教授は「カウンセリングの最終目標は選択肢がひとつじゃないことをわかってもらうこと」と何度も言っていた。まさにこれなんです。何があったかわからないけれど、彼だけが全てじゃない、死ぬことだけが全てじゃないんです。彼に傷つけられたなら別れて幸せにしてくれる別の人を探せばいい。何かあったなら自分を傷つける前に誰かに相談すればいい。それが彼女にはわからなかったんですね。

寮母にどうしたのと聞かれ淡々と話をしていた彼女。でも、お父さまの顔を見て、ぽろぽろと泣き出したそう。お父さまも一緒に泣いたそう。そうだよね。そうだよね。つらかったよね。

ひとつ気になったのが、「大学は何らかの処分を下すと思う」と聞いたこと。自殺未遂したら退学処分になったりするんだろうか。彼女はもう十分苦しんだんです。本当に本当に人生を終わりにしたかったのか、「助けて」のサインだったのかはわからない。だけど、こうして無事だったのだから、これからの人生をハッピーなものにできるように、みんなで応援していくべきじゃないの?大学を追い出されたりしたら彼女はどうしたらいいの?


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観た映画の話も書きたいけれど、ダークになりすぎるので、今日ほんわかした話を。

写真を撮れなくてとても残念だった。


うちの大学には飼われている犬もいればノラもたくさんいます。夜ケンカしているのがよく聞こえる。

あんまりネコはいない。食堂にいるネコさんはよく見るけど。

でも最近、大学の入り口に向かう途中の職員用宿舎の辺りでネコ相(人相みたいな)が悪い子をよく見るようになりました。猫にも顔つきってあるんですよね。なつっこい顔、正直そうな顔、いろんなことを知ってるって感じの顔、気取ってる顔。この子は「話しかけないで」タイプ。声をかけてもツーンとしていつもどこかに行ってしまう。

今日夕方歩いていると、例のネコさんがいる。「PsssPsss」と声をかけると、ネコさんは私を気にした風もなく、道にそって小走り。ネコの小走りって私が歩くスピードくらいなのね。だから一緒に歩いているような感じ。

ネコさんは私たちの前方をじっと見ている。バイクに乗ったおじさんが「ブブゥブブゥ」とシケたクラクションを鳴らして、とろとろ走っている。おじさんがある家の前で止まる。

「はぁん、なるほどね」

おじさんは、夕方にやってくるミルク売り。クラクションは宿舎の人たちに「売りにきましたよ」という合図。

家の中からミルク入れのピッチャーを持った女の人が出てくる。ネコさん、まっしぐら。

私はそのままおじさんを通りすぎたけれど、ちょっと歩いて振り返ると、女の人が家の中に入っていくのにピッタリとついて、ネコさんもおうちに入っていくのが見えました。

うちの子たちもゴハンの時間に準備をはじめると台所にやってきて早くちょうだいとねだる。このネコさんも大好きなミルクのおじさんが来るとわかるんですね。

今日はいろんなことがあって頭がパンクしそうだけど、ネコさんのおかげでちょっとほっとした。





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